梨栽培四方山話し ”知ったかぶり編”

皆さんはすでに知っているかもしれませんが

梨はあの綺麗な花の 薔薇(バラ)と同じ仲間です(バラ科)。もう少し近い仲間では、桜 です。

果物では 林檎(リンゴ)です。その証拠に 花のすぐ下(花の軸)に実に成るところが有ります。

 花びらが5枚です。 めしべも5本です。(バラ 桜は 少し違う)

世界で栽培されている梨は大きく分けて 中国梨(ヤーリ、セッカリ、ツーリなど)

西洋梨(ラフランス、パートレット、パスクラサン など)そして日本梨(幸水 豊水 二十世紀 など) 

 

日本梨の大きな特徴の一つは収穫後追熟(収穫した後しばらく貯蔵して熟させる)の必要の無いこと 石梨細胞が多く含まれていること 体の中では食物繊維として働きます。

近年お店で多く見かける“梨” と言えば 8月は幸水梨 9月は豊水梨 10月は新高梨 だと思います。一昔前は梨と言えば二十世紀梨 長十郎梨でした。19世紀の終わりに今の 千葉県 松戸市の農家の庭先にあった梨の木に すばらしい実をつける木が発見され二十世紀梨と命名され全国に広がりました。しかし黒班病という病気に非常に弱く栽培が難しかったのですが、鳥取県で防除が確立され栽培が盛になりました。その後 その 系統(つながり)は品種改良を続け今日の豊水や新高を生みました。(幸水は別系統です)

 

 品種改良には 普通 違った品種を掛け合わせて優れたものを選び出しそれを増やしていきます。果樹の場合接木によって増やしていきます。したがって同じ品種は、元をたどれば同じ固体になります。梨の木は同じ品種なら隣の木ともまた別の場所の木とも同じと言うことになります。

 

梨の作り方 

梨栽培は1年が一サイクルではありません。

春に花が咲き 実がなって 秋に収穫そして葉が落ち冬に剪定 又春に花が咲き と繰り返されますが、春に咲く花の元(花芽)は 6月頃から来年の準備が始まります。

したがって梨を収穫するまでには1年以上かかると言うことです。

梨の作業には 冬の剪定 春の摘蕾 交配 初夏の摘果 袋掛 夏の枝管理 防除 秋の収穫 施肥 などです。

 

 剪定作業は 葉が落ち樹液が止まった時に木の姿を確認し来年の収穫のために日当たりを良くしたり木の勢いを調節したりするために 枝を切り落としたりします。古い枝を切り落とし若い新しい枝と更新したりします。毎年良い実を収穫するためには欠かせない作業です。又梨には枝を棚面につける誘引と言う作業もあります。 剪定は 力を揃えるとも取れます。

 

 摘蕾(てきらい) 梨は花芽を葉が落ちる前にすでに作っています。剪定の時に有る程度は花芽の処理(数を整理する)はしていますが それでも多いのでならせる量より少し多いくらいの花芽にする。また花が咲いてきたら一かそう((花の一塊)通常8花 咲く)の花をなるべく少なくします。

交配 梨は 基本的に自分の花粉では実はなりません(自家受粉しない)。だから人が交配をします。

5本のめしべに別の品種の花粉を耳掻きの先の綿毛のような道具を使って花 一つひとつに丁寧につけます。私は前年に採って冷凍保存していた花粉をつかっています。混植している露地栽培なら蜂などの訪花昆虫でも交配してくれます。

摘果 交配が済めば実になったことが確認できたらなるべく早く形の良い物を1かそう(一つの花の塊(花芽))1個にします。また実と実の間隔を調節し1本の木になる量(着果量)と 10アールあたりの着果量を調整します。


 袋をかける  梨には袋を掛けて作る品種(有袋栽培)と 袋を掛けない(無袋栽培)の品種があります。


有袋栽培の代表的な品種は二十世紀梨です。あの二十世紀梨のみずみずしい綺麗な肌はどのようにして作られているか解りますか? なにもせずにいたら赤や黄色に汚れた感じの梨になってしまいます。そこで袋を掛けて梨の肌を雨風から守ってやります。 梨の花に交配後2〜4週間後くらいまでのなるべく早い時期に 6×8cm位のパラフィン紙の袋を掛けます。その後また2週間後くらいから 今度は14×17cm位のパラフィン紙(内袋)とハトロンワックス紙(外袋)の二重の袋を掛けます。

合計3重の袋を掛けたことになります。(別の材質 構造の袋もある)

 

無袋栽培の代表的な品種は 幸水 豊水梨です。  摘果までは有袋、無袋 同じ作業ですが

無袋栽培では袋が無い分 梨の品質は良くなりますが、肌がむき出しのためキズが付きやすいので枝 とか棚面とかに触れているところに柔らかいスポンジなどを当てる必要があります。

また 虫や 病気にも犯されやすいので 防除(後で述べる)が大切になります。

 

 管理  夏には枝が茂りすぎ園内が暗くならないように 梨の実にもお日様が当たるように枝を誘引したり間引きしたりします。来年の花芽を着けるためにも重要な作業です。

 

防除 梨には いろいろ病気や虫が付きます。梨の木は庭先の家庭菜園などではほとんど見かけません。 無農薬栽培は非常に難しい作物です。

 病気の代表的なものは 赤星病 4月の雨の日に庭木のビャクシン類に宿った冬胞子が夏の寄生先の梨の葉っぱに赤い病班を作る。夏と 冬 で梨とビャクシン類の間を行き来する。


黒星病 黒いススのような物が付いていたり ひび割れたりする。梨の実や葉っぱ又新しく出た枝にも病班を作る 梨の芽や落ち葉で冬を越し比較的気温の低い時期に感染する。 春の芽吹き前から防除を始める。5月まで位は特に注意が必要です  


輪紋病 梨の実が年輪のように輪状に腐ってくる。気温が高くなってくると発生しやすい。新しく出た枝に感染するとイボ状になり次の年からの強力な感染元となる。


カメムシ
  春から梨にやってきて加害する。汁を吸われるので中がスポンジ状になったりする。


ヒメシンクイムシ 成虫は1〜1.5mくらいの蛾 幼虫はピンク 収穫時期が近くなってくると加害する。  ダニ類などまだ他にもいろいろ有りますが代表的なものです。

 

 収穫  収穫は一年の中で最も楽しい時です。一年の作業の結果が試される時でもあります。

  梨は 品種によって 花に受粉した時から収穫時期まで大まかな日数決まっています。

 幸水は 115日から120日  豊水は140日から150日 新高は 180日くらいで収穫できるようになります。

 それでも木によって 又一本の木の中でも 枝先やきの根元に近い方では熟し方が違いますからそれを見極めながら収穫していきます。

 

施肥  美味しい梨になるように 有機質の肥料を秋〜冬にかけて施用します。

   化学肥料では 成分は高いのですがどうしても味 食味にこくが出ないので町田梨園では有機の肥料を使っています。

 時々 土壌分析を行い土の状態を調べ施肥量の参考にしています。

 窒素N リンP カリK  の成分を考え梨の木に必要な量を施用します。

( NP、k 各成分で約15〜20kg/10aくらい)。

1回に全部を施肥するのではなく2回、又は3回に分けて施肥しています。

 

そしてまた冬の剪定作業と 一年の始まりです。

 

梨の好きな人が一人でも増えると嬉しいな!


町田梨園

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